2003年 オリジナル設計コンクリートスパイラルホーン「土筆」
ユニット:FE-208ES スーパーツィーター:T900A
リング:とんぼさんDFリング
財務局の土地入札(物納物件)を試しに何て気持ちで参加したところ、落札してしまいました。もちろん、希望金額での落札ですから嬉しいことこの上ないです。で、事務所併用自宅を建てようと設計に入った訳ですが、ちょうどスピーカー製作が面白かった時期ですので、この期を逃すはずもなく、建築に絡めての製作を行うことになりました。 フルレンジでバックロード,初めから決めていました。このような機会は2度と来ないでしょうから、20センチに決めます。 |
******土筆の設計に関して考えたこと****** ■夜遅くまで仕事をしていて音楽はながら鑑賞。一番長くいる事務所に設置したかったため、出来るだけスッキ リ したデザインにしたい。 ■長岡鉄男設計「モア」を基本に考えてみる。ただ、あまりに巨大ですのでネックだけ床上に出し胴体部分を床下 に収納すればスッキリするのでは。この時点で、ネッシーを地中に横に埋め込んだ、ごろ寝ッシーなども考えました。 ■以前10pでスワン型を製作したときも大変だったため、モアなんて本当に製作できるのか?作ったものをどうやっ て運ぶんだ? で、作りやすさと持ち運びを考慮。 ■音道を全て90度曲がりの形状とする。ゆえに、スパイラルホーンの採用。 ■各音道は長さ寸法を変える。あまり扁平な音道は作らない。 ■音道曲がり本数は、7本程度にしたい。 ■バックロードの音道を仕切る板を音が通過するのを防ぐため、隣りどおしの音道はコンクリートで仕切る。 ■ヘッドは少し大きめとし、後でユニット裏に砂粒鉛を詰め防振と容量調整の出来る構造に。 ■ユニットの取り外しは大変なので、ヘッド後ろにメンテ用の取り外しできる部分を作る。 ■点音源、ボディでの音の反射を最小限にし、音場の良いものに。 ■ユニット高さは、椅子に座ったときの耳の高さに。 ■板材は堅いものを使いたい。入手の手軽さからタモ集成材30oにします。バットにも使用され太鼓などの材料(よ り高級 な太鼓はナラ)にもなっ ています。トリマーで面取りをしていてトリマービットの軸が曲がりました。本当は ナラ集成材(より 堅い)にしたかったのですが、タモ集成材の方が住宅建材として一般的で手に入りやすかったた めタモにしました。ナラの方が高価。 ■ヘッドは卵形にしたかったが、余りにも大変そうで断念。それでも諦めきれず、ヘッドは取り外し可能にして聴いて いま した が時間と共にこれでいいやと思い、現在はヘッドとネックを接着しました。接着で音の締まりもスピード感 もアップ しました。 □完全固定なので、一発勝負です。当初はヘッドを回せるよう考えていましたが、どうも野暮ったくなるので固定式に。 少しだけ内側に向けていますが、これがベストとはいいきれないと思います。 |
図面のPDFファイルです。「土筆」以外のパーツも入っています。 |
地中コンクリート埋込部分の音道です。ラワン合板15oを使っていますが、コンクリート型枠と考えて良いのでコンパネ12oで良かったのかも。管をつなげていくだけですので、スワンなどのバックロードと比べて製作はかなり楽です。音道同士の間にコンクリート厚60o以上が確保できるようにしてあります。 | |
床下に埋め込むことを考え内部は、防腐防虫塗料です。湿気で虫でもわいたらいやですので。表面はざらっとしていて艶はなく中高域の吸音を期待。 外側は、油性の防水塗料です。こちらは、コンクリートの水分が板に浸透しないようにしました。 埋込部分は、乗用車に乗せて運ぶことを考慮して2パーツに分けて作成し、現地(新築建物)で接着完成しました。工事中暫く現場内に放置されていましたので、現場の人たちの笑いのネタ?でした(^^;; 間近で見るとこれが結構大きい。 |
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完成した埋込部分は置き場所がないので、新築現場の工程に合わせて完成させ、塗料の臭いが残る中で現場に納品しました。 あとは、現場が内装工事に入るまでにネック部分を製作します。側面はシナ合板15ミリを2枚貼、前後はシナ合板15ミリ+タモ集成材30ミリです。 |
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ヘッドとネック部分の組み立て完成です。でかい。FE208ESはあまりにも重たいので、ヘッド内のメンテはヘッド後ろを取り外して出来るようにしました。ネック部分にはシナ合板の小口が見えましたので、小口テープを貼っています。 | |
ヘッド・ネックだけでも巨大でしたので、ツートンで色を付けてスッキリさせてみました。ポアステインで着色、2液性のポリウレタンで塗装です。 ■ポアステインは、薄目に水で溶かし刷毛で一気に塗った後すぐぼろ切れで円を描くように延ばし、ムラを押さえます。今回は2回ほど塗りましたが、2回目は気をつけないと濃くなりすぎます。 ■2液性ポリウレタンは、表面強度の強さを期待しての使用です。ムラも付きにくく塗りやすいです。油性ですので、生地が少し黄色くなります。3回ほど塗装。 ※塗料はいずれも東急ハンズで購入しました。 |
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いよいよ、建物へ取付です。予め、コンクリートスラブに段差をつけておきます。 | |
床スラブと、スピーカーのコンクリートの縁を切るためにスタイロフォーム25oを底面と側面に貼り、6センチほど浮かせた状態でスパイラル部分を穴の中に置きます。スタイロフォームは最悪スピーカーの振動がコンクリートを伝わって建物本体に振動が伝わるのを防いでいます。 | |
左右とも、埋込部分を設置したところです。両側とも多少内側にスピーカーヘッドが向くように配置していますが、僅かです。 背面のコンクリート壁面にも壁バッフル用の開口を開けています。この開口への取付バッフルは取り外し可能にしてありますので、バッフルを取り替えてはいろいろなユニットを聴き比べて見ようと言うのが魂胆でした。 |
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いよいよコンクリートを流し込みます。一旦、ホーン天端でとめたのは、ホーン上部まで一気にコンクリートを流し込むと、船が浮くようにスパイラルホーンが、浮き上がるのを心配してのことです。この後、6センチほどのコンクリートをホーンの上部に追加で流し込ませます。 この事務所の床は、コンクリートに直接、店舗用の塩ビのフロアータイルです。傷の付きにくいものにしました。 |
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部屋は、床・壁・天井ともコンクリートですので、かなりライブでした。そこで、グラスウールクロスを壁と天井の一部に張り込んで調整しています。調整法は手を叩いて、残響を確認しながら吸音材を貼るという原始的な方法でやりました。 ■このグラスクロス、ピアノを弾いても隣りに聞こえないとのふれ込みのマンションの壁にも、貼ってあるのを見かけます。 ■余った一枚に白のテーブルクロスを貼って、ホームシアター用のスクリーンとして使用したりしています。 |
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事務所全体の写真です。左奥に「土筆」が見えます。ネック部分は、床のコンクリートにステンレスのボルトを埋め込み、ナットで締めて固定しています。 |